造船所の写真を解説文とともに紹介します。
ジャパン マリンユナイテッド株式会社のご協力により撮影した造船所の写真を掲載しています。
造船所を見学した時に、「輸出や輸入に使われる輸送手段の99.7%が船によるものだ。」と教えていただいて、軽いショックを受けました。日本が資源を輸入し製品として輸出することで成り立っていることは、知識としては知っていても、その運搬手段まで考えたことがなかったからです。ここでは、そんな日本を支える船の製造現場の写真を掲載しています。撮影は、2011年から2016年にかけて行いました。
造船所の夜景を、写真にも写っている門型クレーン(ゴライアスクレーン)の上から撮影しました。地上からの高さは、およそ80メートルほどですので、安全帯(命綱)を装着しての撮影です。夏に撮影しましたので日没時刻が遅く、作業員さんの姿は、あまり多くありません。
船は、少し形状が違うだけでも速度や燃費に大きく影響します。そこで、実際の船を作る前には、CADで設計したものを元に模型を作り、その模型を使って、この水槽での試験を行います。船は昔から存在する乗り物ですので、それほど大きな変化がないように想像してしまいますが、実際には、2〜3年のスパンで新しい船型を開発していかないとライバル企業に勝てない、サイクルの早い開発が行われています。
船を造る工程は、鉄板を切断するところから始まります。設計室から自動切断機にデータが送られてきて、機械が自動で切断してゆきます。鉄板に部品を配置する時には、できる限り無駄な部分が出ないように配慮されています。また、切り抜かれた部品の多くは、電磁石のついたクレーンで運ばれます。
切断された部材のうち、直線の部品がたくさん並ぶようなものの溶接には、自動溶接機が使われています。人の手で位置を決めるための仮溶接が行われた後、何台もの溶接機でガーッと溶接されます。
造船所の工場内部です。この工場の屋根部分は、戦艦大和の建造に使った工場の屋根をそのまま使っているため、非常に味のあるものになっています。具体的には、今であれば溶接で接続されていると思われる柱とハリの接合部分などは、リベットで行われていて、それぞれの部材がとても厚い材料で出来ています。
部品の組立工場内部です。部品という言葉から想像するだけでは想像できない大きさの部品が並んでいます。部品の上に人が乗って作業をしているので、この写真からも大きさを想像していただけるのではないかと思います。船の建造では、ドックの占有時間をなるべく短くした方が、生産効率が良いため、出来る限り大きな部品(ブロック)にしてドックに運び込まれます。ブロックの大きさは、大きなものでは1000トン程度にまでなります。
溶接作業のうち、上面や複雑な曲面など、機械で行うのが難しい部分は、人が作業しています。造船所では、至る所で溶接の火花が飛んでいるイメージがあります。
塗装工場の作業服が特殊なものだったので、撮影させてもらいました。塗装の前に錆などの汚れを落とす作業をするのですが、粉塵が舞う作業ですので、この作業服が必要になっています。この写真は、2011年に撮影した写真ですので、今は、もっと違う装備になっているかもしれません。
塗装工場内に置いてあった複雑な形状の部品。部品の段階で、すでに配管などが取り付けられています。このような部品は、上下逆さまや横倒しの状態で置かれていることも多く、階段などの取り付け具合を見ないと本当の向きがわかりません。
夜のドックです。小雨が降っていたので、照明が床に反射して幻想的な雰囲気になっていました。写真撮影では、条件の悪い時に良い写真が撮れることって、結構多いんです。
エンジンの取り付け作業です。エンジン全体は3階建ての家ほどもあるので、上下に分割した状態で運ばれて来ます。写真に写っているのは、ピストンなどが入る上半分です。
すでに組み付けられているエンジンの下半分です。クランクシャフトが入っています。ちなみに船のエンジンには、車のような減速機はありません。クランクシャフトの回転が、そのままプロペラ(スクリュー)に伝えられます。つまり、ものすごく低回転のエンジンだということです。
部品を吊り上げるゴライアスクレーンの運転席です。部品を運ぶ時は、下にいる指示者と無線でやり取りをしながら進めますが、写真でもお分かりになるかもしれませんが、クレーンを操る人は、かなり若い人でした。なんでも下で指示をする人の方がベテランさんなのだそうです。また、運転席は、クレーンから突き出すような位置にあるため、クレーンが移動するときは、かなり揺れます。このシーンを撮影している時は、私が倒れないように案内をしてくれた人がベルトを掴んでくれていました。
オイルタンカーの内部はこんな感じになっています。この時は、まだ、船の底に行き来するための穴が空いていて、私を含め、作業員さんたちもそこから出入りしていました。
外観が完成に近づいているオイルタンカー(VLCC)です。この船の大きさは、全長約335m、全幅約60mほどです。戦艦大和が長さ260メートル、幅40メートルほどですので、相当大きな船です。そして、日本には、この大きさのタンカーが、毎日2隻必要だそうです。つまり、日本から中東までの間に何隻も、数珠つなぎのような状態で、船が往復しているのです。なお、船の曲線部分は、その曲線の通るラインが30センチ違うだけで性能に差が出てきますので、新型の船は撮影禁止です。幸い、この船は、撮影可でした。
初めて造船所に撮影に行った時、前日の夜に構内を案内してくださったのですが、遠くから見たオイルタンカーを指して「あの建物の中で作ってるんですか?」と質問してしまいました。それくらい船が大きく見えたのです。造船会社は、普段、見学会などを行なっていませんが、進水式の時だけは見学させてくれるところもあります。興味のある方は、そのような機会に、ぜひ、訪れてみてください。非日常の風景に出会えると思いますよ。
※ このウェブサイトでは、写真を展示したギャラリーページも用意してありますが、そちらはLightbox形式で表示していますので、ポータルサイトの画像検索の対象になりにくいようです。そこで、写真が検索の対象になるように、このようなページを設定しています。ご了承ください。なお、ギャラリーよりもこちらの方が、写真点数が多く、解説文が長めになっています。