RF800mm F11 IS STM + EOS R5で戦闘機を撮ってみた。
はじめに
百里基地でF2戦闘機を取材させてもらって以来、かっこよく飛んでいる戦闘機を撮りたいという欲求を抑えられなくなり、RF800mm F11 IS STMを持って航空祭に行ってきた。本当ならRF800mm F11 IS STMレンズのレビューとゆきたいところだが、僕は、航空祭に撮影目的で行ったことはないし、望遠レンズ自体、ほとんど触ったことがない。よって、この記事は、望遠レンズ初心者の奮闘記っていう程度の感覚で読んでほしい。
なお、カメラは、すべてCanon EOS R5で、「部分拡大」って書いている写真以外は、ノートリミングで掲載しているよ。
いざ、航空祭へ
今回、行ってきたのは「静浜基地航空祭2023」だ。静浜基地は、静岡県焼津市内にあるから、関東圏からでも割と近い。
さて、先も書いたように、航空祭に撮影目的で参加したことがないので、まずは、ネット上にある地図や動画を見ながら、どこでカメラを構えるのがいいのか、下調べをした。どんな撮影でも、行ったことがない場所に行く時は、下調べが重要だ。今回は、基地の外、南側にある歩道から撮ることにした。
救難機と輸送機が飛んできた。
航空祭が始まると、プロペラの練習機の後に、U-125A救難機が飛んできた。なにせ、飛行機を撮ること自体が初めてみたいなものだから、まずはこの救難機で流し撮りの練習をさせていただく。その後、救難用のヘリコプターUH-60Jが飛んできたけど、ヘリコプターは、飛行機と同じシャッター速度で撮るとローターが止まっちゃうんで、ここには載せてない。次に来たのは、C-2輸送機。この辺りまでは、速度が遅いので、まだ構図を気にする余裕があった。レンズのAFも追いついているんじゃないかな。
このレンズの写りについて
RF800mm F11 IS STMの写りが気になる人もいるだろうと思って、拡大した画像も掲載してるけど、僕の場合は、流し撮りがうまく出来ていないので、レンズの性能を十分に発揮できていない。ブレずにピントがきちんと合っていれば、このレンズは、もっとシャープだと思う。ブレてる状態じゃ、カメラだってピントを合わせられないよね。すまん。
ただ、いつもは、現像時にシャープをかけることはないけど、このレンズでは、シャープをかける必要がありそうだ。見慣れているLレンズの画質が基準になっているので、それらとの差を埋めたくなってしまうのだ。また、絞りがF11固定ってことなので、感度を上げる必要が出てくるし、レンズのコントラストが低いので、現像時にコントラストを上げる必要も出てくる、だから、必然的にノイズ除去もやらなきゃいけなくなる。
T-4練習機が飛んできた。
輸送機が2周回って飛び去った後には、プロペラ機の編隊が来て、その後T-4練習機が来た。この練習機は、色々な方向に旋回してくれたので、自分の立ち位置を下調べした意味は、あまりなかったかもしれない。撮影が上手な人なら、きっといい感じの光を捉えることが出来ただろう。僕?僕自身は、旋回に全くついてゆけなかった。いい写真とかって以前に、画面の中に収めることさえ出来ず、頭の中が真っ白。特に頭上を通過する時には、途中で見失ってしまって、再び捉えるまでに、ものすごく時間を無駄にしてしまった。飛んでる時間は、それほど長くないので、これは非常にもったいない。撮った写真を並べてみると、如何に下手くそか、よくわかる。練習機だと思って、なめてた。ブルーインパルスだと思って挑むべきだった。
それから、RF800mm F11 IS STMを、EOS R5に取り付けると、ピントを合わせられる範囲は、画面の中央部分に限定されてしまう。これがまた、被写体の捕捉を難しくしている。中央に被写体を持ってこないとピントが合わないし、ピントが合わないとフレーム内に被写体が入っているかどうかもわからないからだ。
F2戦闘機が飛んできた。
お目当てのF2戦闘機は、F-15戦闘機2機と一緒に飛んできた。このF2戦闘機もグルグル回ってくれたので、非常にかっこよかったのだが、T-4練習機よりもさらに難易度が上がってしまったので、もう必死。
撮って出しなんてしないよ。
僕が写真を覚えた頃は、白黒フィルムを自分で現像して、暗室でプリントをするのが当たり前の時代だった。だから写真がデジタルになっても、アナログでやっていたのと同じような作業をしている。具体的には、コントラストの調整、焼き込みや覆い焼きだ。色に関しては、コダクロームっていうポジフィルムの色の濃さが好きだったので、デジタルでも濃い目のトーンにすることが多い。特に、この航空祭の日は、ぼんやりした空だったので、そのままでは締まりのないのっぺりとした写真になってしまう。だから、ちょっとダークな感じにして、空のトーンが出るようにしてみた。
なんでこんなことを書いているかというと、飛行機写真の世界では、写真を現像せず、撮ったままの状態にすべきだっていう意見もあるからだ。個人的には、現像するかしないかは、撮影者自身が決めれば良いことで、何が正解かっていう話ではないと思っている。もちろん過度にいじってしまうとイラストのようになってしまうので、その辺りの見極めを含めて写真家の個性だと考えている。
展示飛行が、F15戦闘機に交代した。
最後の展示飛行は、F15戦闘機だった。この時間帯になってくると、レンズを支えている左手がだるくなって、思うように動かせなくなってきた。RF800mm F11 IS STMの重量は、1260gなので、RF800mm F5.6 L IS USMの3140gに比べれば、はるかに軽い。しかし、普段、望遠レンズを扱わない自分には、時間が経つにつれて重く感じるようになってしまっていた。そんな時、ふと横を見ると、300ミリF2.8を使っていると思われる年配の男性は、飛行機が遠くに行ってしまった時には、カメラを下ろしていた。彼は、きっと、近くに来た瞬間だけを狙っているのだろう。そういう割り切りが、場数を踏むってことなんだと思った。
後で見返してみたら、撮影した写真は、全部で900枚くらいだった。連写で撮影したつもりだが、意外と細切れに撮影していたみたい。機影を追いかけるのに精一杯で、シャッターを切る余裕すらなかったのかもしれない。
次回の撮影に向けての改善点など
今回は、サーボAFにした上で、「汎用性の高い基本的な設定」を選んで撮影したんだけど、オプションで変更できる「被写体追従特性」や「速度変化に対する追従性」を調整するとどうなるんだろうという疑問も湧いてきた。これは、試すしかないね。それから連写した中でも前後のカットでピントが違う写真があったから、もっとたくさん連写すれば。当たりがいいのかもしれない。まさに数射ちゃ当たるだ。
RF800mm F11 IS STMを使ってみた感想のまとめ
高価なレンズで撮影すれば、画質もいいと思うけど、僕自身は、航空祭での撮影は趣味だと割り切っているので、100万円を超えるようなレンズを買うつもりはない。現段階では、レンズの性能よりも自分の技術の方が大きな問題だしね。ただ、今後、仕事用としてRF100-500mm F4.5-7.1L IS USMを買うようなことがあれば、そっちを使ってトリミングするっていうことはあるかもしれない。航空祭では、思ったより近くを飛んでくれるってことがわかったから。
ピントが合っていた場合の画質については、現像ソフトのノイズ除去やシャープにする機能を組み合わせることで、そこそこ使える画質になりそうだと感じた。2mとか3mとかの大きさにプリントする前提じゃなく、A-3程度のプリントにするイメージだ。また、いわゆる撮って出しっていう使い方には向いていない。撮影後の現像処理は必須だ。
RF800mm F11 IS STMの一番の問題は、ピントを合わせられる範囲が狭いことかもしれない。動いていないものならカメラを振ってフォーカスロックすることもできるけど、動いているものの場合は、そんなことはできないので、ちょっと厳しいと感じた。
厳しいことも書いてしまったけど、今まで試すことさえできなかった超望遠レンズの世界を、低価格で体験できる機会を提供してくれたキヤノンさんには感謝しているし、こういう攻めた商品は、今後も開発してほしいと思っている。僕も「make it possible with canon」の精神で撮影に臨みたいから。
さいごに
今回の撮影では、レンズの性能以前の問題として、撮影者のスキルが低かったので、色々な意味で程度の低い写真を量産してしまった。結果として、悔しい気持ちを味わうことになったけど、まだまだ知らない世界があることも実感したので、有意義な撮影になった。ああっ、もっと撮影したい!
以上、写真家西澤の悪戦苦闘でした!