EOS R5とRF24-70 F2.8 L IS USMを、写真家が使ってみた。

Canon EOS R5で撮影した写真
f2.8  1/1500  ISO400  70mm
Canon RF24-70 F2.8 L IS USMで撮影した写真
f8.0  1/20  ISO1600  70mm 撮影地;山崎製作所

はじめに

私の手元にも、ようやくRF24-70 F2.8が届きましたので、実際に撮影をしてみました。今までは、EOS 5D Mark4にEF24-70 F4 IS USMを組み合わせて撮影することが多かったのですが、私が運営する別サイト「Workers in Japan | 人と仕事の情報発信サイト」の取材をする際に、暗い場所で人物を撮影する機会が多くなったため、購入を決めました。以前の機材では、条件が悪いとISO1600、f4.0、1/30といった組み合わせになってしまうことがあり、このシャッタースピードでは、作業中の人物をピタッと止めて撮るのが難しい状況だったのです。新しい機材なら、同じ条件下でISO3200、f2.8、1/125の組み合わせで撮影でき、歩留まりを上げられるのではないかと目論んでいます。こういった限界の局面は、頻繁にあるわけではありませんが、撮れなかったものが撮れるっていうのは、購入する動機としてはかなり大きなものになります。なお、私はホコリが舞っている現場に行くことが多いので、レンズの脱着回数を減らすためにズームレンズを中心に使っています。特に、この24-70ミリのズームレンズがあれば、ほとんどの撮影に対応出来るので、重宝しています。解像度を考えれば、単焦点レンズの方がいいのかもしれませんが、1日の撮影を単焦点レンズ1本で乗り切れるほどの腕は持ち合わせていません。

なお、ここに掲載している写真は、三脚は使用せずに全て手持ちで撮影しています。また、RAWで撮影したものをフォトショップで現像しています。

それから、ここに書いていることは、私の所有している機材を使っての感想であり、あくまでも個人的な意見にすぎません。その点、ご了承ください。

Canon EOS R5とRF24-70 F2.8 L IS USMで撮影した写真-機械
f4.5  1/30  ISO1600  70mm 撮影地;山崎製作所

EOS R5について

EOS R5の操作性について

EOS R5は、とても使いやすカメラです。ただ、「ISO感度」や「DRIVE」などの項目を変更しようと思うと、マルチファンクションボタンを押してから、サブ電子ダイヤル2を回して項目を呼び出し、それから設定する必要がありますから、ボタンがそれぞれに割り振られていてすぐにアクセスできる5DMark4の方が操作しやすいと感じます。これらの設定方法に関して、R5では、カメラの背面にあるクイック設定ボタンでも変更できます。この方法では、クイック設定ボタンを押してからサブ電子ダイヤル1を回して項目を選ぶ必要がありますので、マルチファンクションボタンから設定する方法と手間数は同じです。背面モニターで設定できますから、表示パネルを見ることができないような状態で操作するには、便利だと思います。

EOS R5の瞳AFについて

Canon EOS R5の瞳AFを使った写真-走る犬
f2.8  1/6000  ISO400  70mm

暗いところで人物の目にきちんとピントを合わせようと思うと、かなり神経を使いますので、瞳AFがR5に搭載されると聞いてから興味津々でした。今回は、身近にモデルさんがいませんでしたので、犬を対象に撮影してみました。(ご協力くださった飼い主の皆さま、ありがとうございました。)

f2.8  1/2000  ISO400  70mm
Canon EOS R5の瞳AFを使った写真-白い犬
f2.8  1/6000  ISO400  70mm
Canon EOS R5の瞳AFを使った写真-近寄ってくる犬
f2.8  1/3000  ISO400  70mm

まず、犬を撮ることに関しては素人ですので、AFの設定を含め、試行錯誤の段階であることをお断りしておきます。その上で、書いてみますと、犬の種類(模様や色)や光の具合によって瞳を認識しやすい場合、しにくい場合があるようです。上の3枚の写真の中の白い犬の場合は、光の具合に関わらず常に迷うことなく瞳を追従していました。一方で、上の犬と下の犬の場合は、時々瞳を認識できない時がありました。上の犬は、以前、曇りの日にEF24-70 F4.0で撮った時は高確率で追従していましたので、瞳AFは、レンズや光との相性もあるのかもしれません。また、イメージスタビライザーのオンオフでも効きが違って来るようです。オンの方が、認識してくれる確率が高いように感じました。

今回の撮影では、2時間くらいドックランの中で撮影し続けて、何枚かお見せできる写真があったという程度ですので、歩留まりとしては、あまり良いとは言えませんでした。ただ、瞳AFが無い場合、動いている犬の瞳にフォーカスポイントを合わせて撮るなんてことはできませんので、本来0枚であるべきところが、瞳AFのおかげで数枚撮れただけでも、すごいことだと思いました。

EOS R5のピント精度について

私はスポット1点AFを使うことが多いので、それを使った際の感想です。5D MMark4では、AFのセンサーと画像センサーが違っていたため、ピントが微妙にずれることがあり、それを回避するためにマイクロアジャストメント機能を使ってレンズごとに細かく調整した上で撮影に臨んでいました。それに対してR5では、AFのセンサーと画像センサーが同じであるため、調整は不要です。これだけでも助かるのに、ピント精度も良くなっています。狙ったところにピタッと来ますので、とても気持ちがいい。下の写真は、それほど明るい場所ではありませんでしたが、鉄筆(罫書き針?)にピタッと来ています。

Canon EOS R5とRF24-70 F2.8 L IS USMで撮影した写真-職人さん
f4  1/125  ISO1600  46mm 撮影地;山崎製作所

EOS R5の感度について

高感度ノイズを許容できる範囲については、個人差のあるところですが、私の場合は、1600であれば普通に、3200までなら許容範囲。6400になると荒れることを覚悟で使うといった感じでしょうか。大きく引き延ばすことを前提に撮影していますので、ちょっと厳しめかもしれません。

EOS R5のダイナミックレンジについて

R5で撮影していると、ハイライト警告表示が出ることが多く、ダイナミックレンジが狭いのかなと感じることがあります。しかし、RAW現像をしていてちょっと驚いたことがありますので、書いてみます。

EOS R5のダイナミックレンジを説明するための写真
f2.8  1/4000  ISO400  70mm

上の写真は、ハイライト警告表示が広い面積に表示されましたので、露出オーバーでハイライト部分のデータが飛んじゃってるかなと思った写真です。しかし、ダメ元で「基本補正」の「露光量」を「-2.00」にしてみたところ、飛んでしまったと思っていたところにも情報が残っていました。私のように昔からデジタルカメラを使っていると露出オーバーになってしまった写真は、ハイライト部分のデータが無くなっていると思い込んでいますが、どうやらそうではないようです。以下に目の部分を拡大したものを掲載します。

EOS R5のダイナミックレンジを説明するための写真。補正なしの状態。

撮ったまま。 最初、こんな感じでしたので、失敗写真だと思っていました。

EOS R5のダイナミックレンジを説明するための写真。補正値明るさ-1.15。

明るさ-1.15補正。 上の写真を現像した時の補正量です。

EOS R5のダイナミックレンジを説明するための写真。明るさ補正値-2.00。

明るさ-2.00補正。 飛んでしまったと思った部分にもディテールが残っていました。

EOS R5のバッテリーの持ちについて

カメラを構え続けるような撮影をしていると、3時間は持たないような印象です。5D Mark4の場合は、撮影枚数が少なければ1日持ちましたので、それに比べるとバッテリーの残量は、常に気にしておく必要があると感じています。ここぞっていうタイミングの前には、交換しておいた方良さそうです。

EOS R5の気になった点、いろいろ

R5は、高画質の写真を簡単に撮影できるすごいカメラなのですが、細かなところで気になるところがいくつかありますので、書き出してみます。

RFシステムのレンズキャップとボディーキャップのはめ合わせを説明するための写真。

・レンズキャップとボディーキャップ
EFレンズでは、レンズやボディーのキャップをつける時に、指標に合わせなくてもちょっと回転させれば、どこかではまりました。しかし、RFレンズではきちんと指標に合わせないと、はまらないようになっています。これでは、暗いところでの作業がとてもやりにくい。ですので、指標のところに白いテープを貼りました。これで、暗いところもOKです。塗装しようかと思いましたが、塗料が剥がれてボディーとかに入ったら嫌だなと思ってテープにしました。丈夫な接着剤でプラスティック片などを貼り付けてもいいかもしれません。

EOS R5の背面モニターを説明するための写真。

・バリアングルの背面モニター
R5の背面モニターは、写真のようにバリアングルになっています。これが、自分には使いにくい。例えば、地面スレスレの低いアングルで撮影するような時、背面モニターをファインダー替わりに使おうと思っても、光軸と全く関係ない方向を向いている背面モニターでは、どこに水平垂直を合わせればいいのかわからないのです。自撮りをする人には便利だと思いますけど。

EOS R5のリモコン端子を説明するための写真。

・リモコン端子
リモコン端子は、写真のようにレンズの近くにレイアウトされています。奥まった位置ですので、座面の大きな雲台にカメラをセットした後ですと、レリーズを取り付けにくくなってしまいます。取り付けられないわけではないので、細かなことですけど、ちょっと気になりました。

RF24-70 F2.8 L IS USMについて

Canon EOS R5とRF24-70 F2.8 L IS USMで撮影した写真-職人さんの工具
f5.6  1/125  ISO1600  50mm 撮影地;山崎製作所

このレンズは値段が高いので、レンズの明るさにこだわりが無ければ、RF24-105 F4という選択肢もあったかもしれませんが、暗いところで人物を撮るという明確な目的があったため、思い切りました。

RF24-70 F2.8 L IS USMの画質について

レンズを買うと、まず気になるのは画質ですね。私はレンズの画質が気になる時は、壁に新聞紙を貼って、それを複写しています。レンズの性能が気になる時ももちろんですが、レンズが片ボケ(画面の片方しかピントが合わない状態)しているかもしれないと気になった時にも行なっています。普段の機材チェックでは、ここまでめんどくさいことはせずに、本棚を撮影して確認する程度です。

レンズの画質を確かめる方法を説明するための写真-垂直方向の設定
レンズの画質を確かめる方法を説明するための写真。
レンズの画質を確かめる方法を説明するための写真-対象物を用意する。

さて、具体的な方法について。まず、背面モニターが光軸に対して垂直かどうかを確認しました。レンズの前面と背面モニターの平行を水準器で確認し、背面モニターが光軸に対して垂直だと判断しました。次は、壁に貼った新聞紙の前に三脚に固定したカメラを持って行って、カメラの光軸を新聞紙の中心部分に合わせます。この時、先の水準器を背面モニターに当ててカメラの垂直を確認しておきます。こうしておいてから、新聞紙が画面いっぱいになるまで、カメラを離してゆきます。

レンズの画質を確かめる方法を説明するための写真。

このような段取りを踏まず、ファンダーを覗きながら中心を求めても良いのですが、何も基準がない状態から中心をきちんと出すのって意外と時間が掛かります。段取りを踏んでも床が真っ平らでない限り調整は必要となりますが、微調整で済みますので、結局、早く中心を出すことが出来ると思います。

このような方法で、24、35、50、70ミリでテストしてみた結果、各焦点距離で、中心部分は開放からシャープです。一方、周辺部分は、絞ってもカッチリとはしません。個人的には、f8に絞れば周辺部分の画質も充分に許容範囲だと思いますが、値段が高いだけに、この辺りを気にするかどうかで評価が分かれそうです。また、実際には、このような平面を撮影する機会は滅多になく、立体的なものを撮ることがほとんどですから、被写体によって違った感想になることもあり得ます。下の写真は、画面の隅っこの赤いボタンにピントを合わせました。個人的には、この程度の画質であれば問題ないと思っています。

RF24-70 F2.8 L IS USMのボケ具合を見てもらうための写真-工作機械のアップ
F4.5  1/500  ISO3200  70mm 撮影地;山崎製作所

RF24-70 F2.8 L IS USMのボケ具合

これはもう、写真を見ていただくのが一番かと思います。ここまでに掲載している写真に関しても絞りの情報を書いておきましたので参考にしてください。

RF24-70 F2.8 L IS USMのボケ具合を説明するための写真-犬のアップ
f2.8  1/4000  ISO400  70mm

RF24-70 F2.8 L IS USMのボケ具合を説明するための写真-工具のアップ
f4.5  1/250  ISO1600  65mm 撮影地;山崎製作所

RF24-70 F2.8 L IS USMの周辺光量について

周辺光量については、光量が落ちていた方が良い場合と気になる場合があると思います。この記事の一番上に掲載した灰色の犬の写真は、光量が落ちているのが逆にいい雰囲気になっています。気になるのは、下の写真のように開放f値の近くで被写体の背景が平坦な場合でしょうか?ソフトウエア上で補正出来る項目ですが、サンプルを掲載しておきます。

RF24-70 F2.8 L IS USMの周辺光量落ちを説明するための写真
周辺光量補正なし f2.8  1/6000  ISO400  70mm
RF24-70 F2.8 L IS USMの周辺光量落ちを補正した場合の写真
周辺光量補正適用

EOS R5とRF24-70 F2.8の組み合わせにおけるイメージスタビライザーについて

この記事には、1/20秒や1/30秒といったシャッタースピードで撮影した写真も掲載しています。それらは、手持ち撮影でもブレずに撮影できています。低速シャッターで撮影していても安心感があるので、この時の撮影は、結局、三脚を使わず終わってしまいました。私の場合、三脚が必要になるのは、ブレを止めるためというよりは、構図を厳密に決めたい時になってゆくような気がしてます。

今の機材構成

EOS R5とRF24-70 F2.8は、ともに高価な機材ですので、私は全面的にRシステムに移行することができず、今まで使ってきた5D Mark4と併用しています。Rシステムは、EOS R5とRF24-70 F2.8だけで、EF70-200やEF16-35を使う時は、アダプターを付けて使っています。今のところ、5D Mark4は予備カメラとして持って行っているだけで、2台を同時に使う状況にはなっていません。2台のカメラを同時に使う状況が頻発するようであれば、R5を2台にすることを検討する必要があると思っています。

写真家の機材。RFシステムとEFシステムの併用。

おわりに

私が一番得意としているのは、スナップ撮影です。目の前の風景を、その雰囲気ごと写真に落とし込むような撮影で、構造物を撮っていても気持ちは同じです。そんな私にとって大事なのは、「いいな」と思ってから、最初にシャッターを切るまでの時間です。時間がかかってしまうと、ピントや露出などの技術的なことの点数は高くなってゆきますが、目の前の感動は、すり抜けてしまいます。ですから、レンズを取り替えたりカメラの設定を考えたりする時間は、短い方がいい。R5は、撮影中に余計な心配をせず、パッと構えてパッと撮れますから、理想の機材に近づいています。ただ、別の視点で考えれば、写真家としての存在意義に挑戦状を叩きつけてくる怖いカメラなのかもしれません。誰でもいい写真が撮れちゃいそうですから。

以上、写真家に西澤丞の悪戦苦闘でした!