ブルーインパルスの撮影。RF800mm F11 IS STM、一本勝負!
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この日の最初のOKカット。基地の南側にある公園に車を止めて、堤防の上から撮影した。
はじめに
ここに掲載したのは、2023年8月25日に撮影した写真だ。松島基地航空祭を翌々日に控えた状況で、ブルーインパルスが事前練習をしていたんだ。基地から発表されていた練習スケジュールでは、午後からの練習だけだったのだが、偶然、午前と午後の2回にわたって練習が行われたのでラッキーだった。天気もすこぶる快晴で、ブルーインパルスに関する運を全部使ってしまったような気がする。
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この記事では、写真を撮影した順番に掲載していて、ここからが午後の写真。ここから午後ってことは、午前中は、ろくな写真がなかったってことだね。午後の撮影ポイントは、基地の西側。基地の東側には、ブルーインパルスの格納庫前に土手があって、そこで撮っている人もたくさんいたが、その場所は、午後から逆光になるので、西側から撮ることにした。
使っている機材について
この記事で使っているカメラは、Canon EOS R5。レンズは、RF800mm F11 IS STMが1本だけ。R5は、普段、人物や構造物などを撮る時に使っているカメラで、とても使い勝手の良いカメラだ。ただ、キヤノンさんや航空機を専門に撮っている人に聞くと、R6 Mark2などは、動くものに特化しているので、ピントの食いつきが違うらしい。レンズだって、RF800mm F5.6 L IS USMの方が格段に性能がいいだろう。解像度の目安となるMTF曲線を見るだけでも、性能の違いは明白だ。じゃあなぜ、R5とRF800mm F11 IS STMの組み合わせで撮影しているかというと、僕にとって飛行機の写真は、あくまで趣味だからだ。
こういう状況なので、この記事は、飛行機を撮ってみたいけど、100万円以上のレンズを使わないと撮れないのかなと思っているような人の参考になればいいなと思って書いている。RF800mm F11 IS STMで、どんな写真が撮れるのかを知ってもらえれば、機材を選ぶときの参考にしてもらえるかなと思ったんだ。もちろん、このレンズでも、上手な人が使えば、もっと品質の良い写真が撮れることは間違いない。僕なんか所詮、初心者だからね。
なお、画像はノートリミングで掲載しておく。
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露出は、マニュアルで決めているけど、途中で設定を変えている余裕なんてない。幸いR5は、一見飛んでいるように見えているハイライト部分でも、現像をすればデータが残っている場合が多いので、とても助かる。
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ブルーインパルスの写真は、初心者向き。
今回、撮影していて、戦闘機1機による機動飛行を撮るよりも、ブルーインパルスを撮る方が初心者向きだと感じた。理由は三つ。
一つ目は、編隊飛行では急激な動きがなく、動きが全体的に穏やかなこと。
二つ目は、ブルーインパルスは機体の色が明るく、スモークも出ているので、見失う可能性が低いってことだ。また、一度ファインダーから外れてしまっても探しやすい。その点、F2戦闘機なんかだと、一度見失うと、どこに行ったのかわからなくなってしまう。
三つ目は、スモークを画面に取り入れないと絵にならないこともあって、必然的に少し引いた絵になる。当然のことだが、動いている被写体をアップで撮るよりも、引いて撮る方が簡単だ。
RF800mm F11 IS STMが、イマイチなところ
まあ、値段からすれば仕方のないことだし、望遠レンズに触れるチャンスを低価格で提供してくれたことに感謝もしているけど、やっぱり、これは、書いておく必要があるだろう。
・フォーカス
まずは、フォーカスに関する不満だ。例えば、フォーカスエリアに被写体が入っていてもピントが合わない時があって、く〜って思うことがある。そんな時は、慌てず騒がず、AF-ONボタンを押し直せば復帰するんだけど、チャンスを逃してしまうと悲しくなる。また、こちらに近づいてくるようなシーンを連続で撮影している時でも、ピントの精度にばらつきがある。こういう時は、カメラ自体を大きく動かしているわけではないので、単純にAFのスピードと精度が戦闘機に追いついていないんだろう。これは、もう諦めているけど、パソコンで見るまでわからないので、ドキドキだ。
ただ、フォーカスに関しては、あくまでR5と組み合わせた時の話なので、R6Mark2とかで撮影すれば、また違った結果になると思う。
・画質
画質についても書いておくと、僕は普段、現像時にシャープをかけないが、このレンズを使った時だけは、シャープをかけることにしている。他のレンズと比べると、かなりぼんやりした感じのデータが出てくるので、画質を揃えようとすると、どうしても必要になるんだ。シャープをかけるとノイズも目立つようになるから、ちょっと気になるけどね。なお、普段の現像でシャープをかけないのは、写真の用途が決まってから、それに応じたシャープをかけるからだ。
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カメラの設定やRAW現像について
・ピクチャースタイルと保存形式
キヤノンのカメラは、あらかじめピクチャースタイルというプリセットを選んでおくことで、現像をしなくてもきれいな色に仕上げてくれる機能が備わっている。しかし、僕は現像をする前提で撮影しているので、元データをあまりいじらない忠実設定を選んでいる。元データをピクチャースタイルで補正した上に、現像で補正をかけると2度の補正をかけることになって、データが痛むんじゃないかと思っているからだ。また、RAWデータでしか撮影しないので、いわゆる「JPG撮って出し」は行わない。JPGのみで撮影した場合、画像にゴミがついていた場合に、ゴミを消してから再度保存しなければならない。ゴミ処理後の保存をJPGにすると、画像が劣化するからだ。ちなみに画面にゴミがついているかどうかは、現像時に1枚ずつ100%に拡大してスクロールしながらチェックする。面倒なんだけど、僕の写真は、壁一面に引き伸ばされることもあるので、必ずチェックしている。展示作品にゴミがついていたらかっこ悪いからね。
・トーンカーブを使った調整
現像はフォトショップで行っていて、トーンカーブの調整が主な作業となる。トーンカーブを、S字を描くように調整し、ハイライト部を明るくし、シャドー部を締める。コダクロームっていう昔のフィルムのトーンが好きだったので、今でも、それに近いトーンにすることが多いかな。被写体や何を伝えたいかにもよるけど。
さて、トーンの調整について、以下に少々ショッキングな例をご覧いただこう。
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こんな感じで、かなりトーンカーブを調整している。普段は、露出を変えて何枚か撮影したりもするんだけど、この撮影ではそんな余裕はないので、露出が安定しないのはやむを得ないと思っている。
・露出の決め方
普段の露出の決め方についても書いておこう。写真を覚えた頃はポジフィルムを使っていたし、1990年代のデジタルカメラを使っていたこともあり、オーバーよりもアンダー目を選ぶ傾向にあった。白飛びは、挽回できないけど、アンダーは明るくすれば、何とか救われると過去の経験でわかっていたからだ。しかし、このR5を使うようになってからは、気持ちオーバーくらいの方が後での作業がしやすいと感じている。先にも書いたように、データを開いた段階では白飛びしている部分であっても、「明るさ」のスライダーをアンダー目に寄せれば、データが残っているからだ。逆にアンダー目の露出の写真を明るくすると、トーンが汚くなってしまうし、画質も悪くなる。
また、以前は、ヒストグラムを頻繁に見ていたけど、ミラーレスカメラになってからは、シビアな場合を除いてあまり確認しなくなった。ファインダーに露出シミュレーションを設定しておいて、普通に見えていればオーケーといった感じだ。
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・色の補正
今回は、現像をしている最中に、空の面積が大きかったこともあり、その色が気になった。写真によっては、空の部分にグリーンやマゼンタが浮いているように感じる写真があったからだ。それらの写真は、「グレーティング」で中間調をほんの少しだけブルーに寄せた。調整前後の写真を比較しなければわからないくらいの微妙な違いなんだけどね。
グレーティング以外にも、「基本補正」の中にある「色温度」や「色かぶり補正」を使うことが多いけど、今回は使わなかった。R5に限って言えば、マゼンタが被ったような色に出ることが多いので、色かぶり補正を、ちょっとグリーンに振ることが多いかな。
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写真は、光。だけど。
上の状況をファインダーで追いかけている時には、「お〜、いい場所に来た〜!!後は、光!」って思っていたけど、結局、機体に光が当たることはなかった。写真では、背景、構図、光がいいバランスになってくれないとかっこよくならないんだけど、ブルーインパルスの場合、こっちが動いてどうにかなるようなものでもないので、運任せの要素が大きいね。空の色、雲、太陽の位置、演技する場所や方向。要素がいっぱいある中で、自分でコントロールできるのは、立ち位置くらいか。
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編隊をファインダーに捉えたはいいけど、画面の左右にはスモークが漂っていたし、機体に光が当たっていなかったので、構図を調整しながら光が当たるタイミングを待った。結局、いい感じに光が当たってくれたけど、もうちょっとだけ機体前方に空間が欲しかった。まだまだってことだ。
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いい感じの光の中を、こっちに向かって飛んできてくれた。だけど、このカットは、ちょっとだけピントが甘い。まあ、拡大しないとわからないんだけどね。このピント精度に納得出来るかどうかが、このレンズで遊べるかどうかの分かれ目かもしれない。ピントがちょっとずれているこの写真でも、A3サイズのプリントなら問題無い気がしているので、何に使うのかによっても違ってくると思う。
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おわりに
写真撮影を仕事にしている自分にとって、目的もなく趣味で撮影をするなんてことは、今までなかった。だから、なんでこんな撮影をしているのか、いまだによくわからない。しかし、ずっと立ち入り禁止のところばかりにいたので、一般の人と一緒に撮影している状況が、新鮮で面白い。それにしても、ご同好のみなさんの熱意は、すごいね。僕よりも明らかにいい機材だし(笑)
以上、写真家西澤の悪戦苦闘でした!!
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