製鉄所の写真を解説文とともに紹介します。

JFEスチール株式会社の全面協力により撮影した写真を掲載しています。

製鉄所の機関車と貨車の画像

「鉄には、性能がある。」という話を伺ってから、いつかは、きちんと撮影したい場所のひとつとして、ずっと私の頭の中にあった製鉄所を、2015年に、JFEスチール株式会社のご協力により、ようやく撮影することが出来ました。

製鉄所の原料ヤードの画像

製鉄所の原料ヤードです。この写真に写っているのと同様の機械の上に登らせてもらって撮影しました。画面の奥からこちらに向かって伸びているものは、ベルトコンベアで、これを使って原料となる鉄鉱石や石炭、石灰石が高炉まで運ばれてゆきます。原料ヤードは、とても広く、置いてある原料ごとに雰囲気が違うため、出来ることなら、しばらくさまよっていたいと思う空間です。

製鉄所の高炉の画像

製鉄所の全景。塔のように見えているのが、鉄鉱石を溶かすための溶鉱炉(高炉)で、高さは100メートル程です。撮影した時は、このような場所まで連れて行ってもらえるとは思っていなかったので、とてもうれしかったのを覚えています。ただ、急ぎではない屋外作業は、この撮影のために中止してくださっていると聞き、手が震える思いで撮影しました。また、フィルターをかけたわけでもないのに見渡す限り赤茶けた風景が広がっていて、その非日常な感じが、製鉄所の魅力のひとつだと思います。

出銑の画像

高炉の下部から溶けた鉄を取り出しているところです。溶けた鉄を取り出すには、どこかにハッチのようなものがあって、そこを開けるのかと思いきや、高炉の下部にドリルで穴を開けて取り出すというワイルドなものでした。開けたしまった穴は、あとで粘土状のものを入れて塞ぐのだそうです。また、高炉の下には、穴(出銑口)を開ける場所が4箇所あって、3時間ごとに場所を変えて作業が行われます。

溶けた鉄のサンプル採取作業の画像

高炉から出てきた鉄の成分を分析するためのサンプルを採取しているところです。この場所は非常に熱く、溶けた鉄が飛んでくる可能性もあるので、みなさん重装備で作業されていました。

高炉から出てくる銑鉄を積んだ箇所の画像

高炉(溶鉱炉)から溶けた鉄(銑鉄:せんてつ)が運び出されています。機関車の後ろの貨車に積まれた鍋のような形の容器の中に銑鉄が積まれています。この日は、安全などに関してとても厳しい人が案内をしてくださっていて、朝の段階では、線路のそばで撮影するなんてもってのほか、という感じだったのですが、撮影の意図を説明しているうちに熱意が通じたようで、このような場所での撮影もさせていただけるようになりました。撮影では、コミュニケーション能力も大切です。

銑鉄を積んだ貨車と作業員の画像

転炉の近くまで運ばれてきた銑鉄。貨車は、リモコンで操作された機関車に押されて進んでいます。この時は、線路の近くで作業をしていた作業員さんが手を振ってくれたので、そのタイミングを逃さずに撮影しました。こういうシーンは、演出しても不自然になってしまうので、いつも成り行きですが、作業員さんが線路のそばにいるのを見つけましたので、何かしらの行動をするだろうと予想して、何かが起こるのを待ち構えて撮影しています。

転炉にスクラップを投入するシーンの画像

溶けた鉄は転炉という炉で、成分の調整が行われます。この写真は、転炉に鉄のスクラップを投入しているところです。スクラップの投入が終わってから、溶けた鉄が投入されます。ちなみに転炉に入れる材料は、一度に330トンほどです。また、この段階でどこに出荷される商品なのか既に決まっています。

製鉄所の転炉の画像

溶けた鉄を転炉に投入している様子です。火花のようなものが飛んでいることからもお分かりのように、間近で撮影することは厳禁で、この写真はリモコンを使って撮影しています。私自身は、もっと離れたところで、物陰に隠れながらの撮影です。

鋼鉄が誕生する瞬間の画像

転炉から成分調整の終わった鉄、つまり鋼鉄が出てきた瞬間です。この写真は、とても気に入っている写真ですが、最初からこのようなシーンが撮れると思っていたわけではありません。別のところを撮影していた時に、案内してくださっていた方が「こっちで、面白いのが見れるよ。」と言って連れて行ってくれた先で出会ったのです。現場では、案内してくださる方の協力が何よりも大切です。

連続鋳造の作業をしている作業員の画像

溶けた鉄をブロック状の塊にするための連続鋳造機です。機械の上から溶けた鋼鉄が流し込まれ、ところてんのように出てくるイメージです。これは、ちょっと離れた場所から望遠レンズで撮影しました。

製鉄所の連続鋳造機の画像

連続鋳造機の下部です。この写真には写っていませんが、機械が動いているときは、上から出てきた鋼鉄の塊が機械のカーブに沿って水平方向に向きを変えて流れてゆきます。水平に向きを変えた後は、ある程度の長さごとに、ガスバーナーで切断されてゆきます。製鉄の工程とは、関係ないのですが、個人的にこの複雑な配管がたまりません。

鋼鉄の塊を薄く伸ばすための設備、熱間圧延機です。加熱した鋼鉄の塊を少しずつ冷やしながら伸ばしてゆきます。冷やす速度によって鋼鉄の性質が違って来ますので、温度や時間がとても繊細に管理されています。目の前で鉄の塊が、この装置の下を行ったり来たりしているのを見た後だと、その迫力と温度管理の繊細さのギャップに驚きます。

圧延機のローラー交換作業の画像

鋼鉄の塊を薄く伸ばすための機械のアップです。上下にあるローラーのうち、下のものが交換するために取り出されている状態です。撮影の際に、奥があまりにも暗く、トーンが出ないと判断しましたので、案内してくださっている方のヘルメットにあったライトで奥を照らしていただきました。

冷却中の厚板の画像

薄く伸ばされた鋼鉄の板が冷却されています。この鋼鉄の板は、厚さが2センチくらいあって、主に船や橋を作るために使われます。この空間は、床全体が大きなベルトコンベアのようになっていて、画面の右側から左側に向けて、鉄板がゆっくり移動していました。

これらの写真は、写真集「鋼鉄地帯」のために撮影した写真ですが、このページでも写真集と同様、材料となる鉄鉱石を溶かすところから、鋼鉄の製品が出来るまでを順番に並べてあります。なお、製鉄所は、撮影に関する規制が厳しく、ネット上に存在する写真も、それほど多くありません。また、鋼鉄が出来るまでを詳しく紹介している写真および写真集は、他に存在しないと思います。

※ このウェブサイトでは、写真を展示したギャラリーページも用意してありますが、そちらはLightbox形式で表示していますので、ポータルサイトの画像検索の対象にはなりません。そこで、写真が検索の対象になるように、このようなページを設定させていただきました。ご了承ください。