核融合の写真を解説文とともに紹介します。

核融合の研究施設である核融合科学研究所、那珂核融合研究所、大阪大学レーザー科学研究所、筑波大学プラズマ研究センターで撮影した写真を掲載しています。

解体中のJT60の画像

ここに掲載しているのは、核融合の研究をしている施設で撮影した写真です。これらの施設では、核融合を使って電力を生み出すための研究を行なっています。「核」という文字がつくため、条件反射的に「危ないんじゃないか?」と思われる方もいらっしゃるようですが、核融合は、反応を起こすことや継続させることが難しいため、装置に不具合があれば、反応が終わってしまいます。よって、暴走することはありません。また、将来的には、海水を原料に電力を作り出そうとする研究ですので、資源の少ない日本にとっては、価値のある研究だと思います。

核融合炉の画像

大型ヘリカル装置の真空容器の内部を、点検の時に撮影させてもらいました。内部に異物を持ち込まないように、私も作業員さんと同じつなぎを着て撮影しました。この装置は、らせん状にうねうねした形をしていますが、この装置の周りには、らせん状のコイルがあるからです。コイルによって発生した磁力でプラズマを閉じ込めるのです。撮影地:核融合科学研究所

大型ヘリカル装置の真空容器の画像

大型ヘリカル装置の内部。左の凹んでいる部分は、プラズマを観察するためのポート部です。装置の中には、見慣れた形状のものは、何もありません。普通の暮らしの中になるものは、人が使ったり見たりすることを前提にデザインされていますが、このような装置では、機能を追求した結果としての形しかないからです。それは、機能美という言葉で表されるかもしれませんが、時として、人の想像を超えた形になっているところが、とても面白いと感じます。撮影地:核融合科学研究所

核融合炉の外観の画像

大型ヘリカル装置の外観。先ほどの2枚の写真に写っている装置の外側は、このようになっています。銀色の円盤のような形のものの下に、先ほどの装置が設置されています。周囲には、プラズマを加熱するための装置やプラズマを発生させる部分(真空容器)を真空にするためのポンプなど、様々な装置が取り付けられています。撮影地:核融合科学研究所

核融合科学研究所で撮影した画像

プラズマへ燃料を補給するために使う装置です。水素の氷の塊を高圧ガスで打ち込みます。撮影地:核融合科学研究所

レーザー核融合実験装置、激光Ⅻ号の画像

レーザー核融合の研究施設内にあるターゲットチャンバー。この研究施設にある装置は、激光Ⅻ号というちょっと変わった名前の装置です。写真に写っている丸い物体の中央に燃料を投入し、それに向かって複数のレーザーを打ち込んで核融合を起こす研究をしています。初めて撮影に行った日は、レーザーを打ち込む装置にカバーがかかっていましたので、点検の時の改めてお邪魔して、カバーが外れた状態を撮影させていただきました。撮影地:大阪大学レーザー科学研究所

レーザー核融合の光源の画像

レーザー核融合の実験に使う光源。光源から出てくる光は不可視光線ですが、増幅などの必要に応じて周波数(色)を変えます。ターゲットチャンバーなどの物々しさに比べるととても小さな光源ですが、この後、キセノン菅(写真に使うストロボのようなもの)を使って、徐々に増幅させます。撮影地:大阪大学レーザー科学研究所

核融合実験装置、ガンマ10の画像

核融合の研究装置、ガンマ10の内部。ガンマ10は磁場閉じ込め方式のひとつであるミラー方式を用いた装置です。これを撮影した時、装置の中に入ることは許されませんでしたが、手を伸ばしてカメラを入れることは、大丈夫だとのことでしたので、手を伸ばしてノーファインダーで撮影しました。もう片方の手には、ストロボを持っていましたので、アングルと照明がいい位置になるまでに何枚も撮影しました。また、この写真は、写真集「Build the Future」にも掲載している写真ですが、私の写真集に掲載している写真の中では、ストロボを使った唯一の写真です。照明が全く無いとわかっていたのでストロボを持っていましたが、普段は、ストロボを持ち歩くことはありません。人が作業するところではれば、何かしらの照明があるからです。撮影地:筑波大学プラズマ研究センター

ガンマ10の内部の画像

ガンマ10の両側にあるヘリウムクライオパネル排気装置。燃料の排気ガスを吸着させるための装置です。これを撮影した時は、ノギスや物差しを持った博士の後ろについて装置の中に入って行きました。私が撮影でお邪魔した研究施設は、それほど多いわけではありませんが、装置の改造などを博士たちが自ら行なっている研究施設は、かなり多いように感じます。ちょっと意外な印象です。撮影地:筑波大学プラズマ研究センター

核融合炉JT60の画像

JT-60の外観です。2009年に撮影したこの装置は、すでに存在しません。これを書いている2020年時点では、次の装置JT-60SAが完成し、実験に向けた準備を進めている最中です。写真の力は、色々あると思いますが、私は記録を残す力に重きを置いていて、撮影する時でも、写真を現像する時でも、なるべくいじらないようにしています。加工したことが目立つような処理をしてしまうと、イラストのようになってしまって、記録としての価値が無くなるような気がするからです。撮影地:那珂核融合研究所

那珂核融合研究所の実験装置の画像

真空容器内のプラズマを加熱するための負イオン中性粒子入射加熱装置のイオン源。撮影を始めると同じ場所に何回か行って、不足している写真の穴を少しずつ埋めてゆく感じで進めることになります。ただ、装置に関しては、予備知識が無くても、意外とポイントを抑えて撮影していることが多いです。この装置も、初めの頃に撮影した装置ですが、あとで重要な装置だと教えてもらいました。撮影地:那珂核融合研究所

核融合の実験装置の画像

プラズマを加熱するための高周波加熱装置の一部。写真集「Build the Future」の裏表紙に採用している写真です。この場所は、暗くて三脚を立てられない場所でしたので、ブレが心配で何枚も撮影した記憶があります。今は、機材の性能が良くなっていますから、そういう心配をする機会が少なくなっていますね。ちなみに、この写真は、2009年の撮影です。撮影地:那珂核融合研究所

建設中のJT60SAの画像

建設中のJT-60SAです。JT-60SAは、フランスで建設中の国際熱核融合実験炉(ITER)での実験を補完する目的で建設されました。この文章を書いている時点(2020年)では、装置が完成し、実験に向けた準備が進められています。写真で、Dの字のような部品を吊り下げていますが、これを繋げてドーナツ状にし、その中を真空にしてプラズマを発生させます。装置の建設では、高い精度が要求されるため、全ての作業が慎重に行われていました。撮影地:那珂核融合研究所

JT60SAの真空容器の画像

JT-60SAの真空容器の内部です。建設中ですので、作業用の機材が置いてあります。撮影地:那珂核融合研究所

ITER用の超伝導コイルの画像

ITER(国際熱核融合実験炉)のために開発している超伝導コイルの試作品です。ITERの建設には、日本も参加していて、この超電導コイル以外にも保守点検用ロボットアームや加熱装置などを担当しています。

ITER用ロボットアーム試作機の画像

ITER(国際熱核融合実験炉)で使うためのロボットアームの試作品。このロボットは、どうしてもこのような見上げたアングルで撮影したかったので、床に寝転んだ上に、ヘルメットを壁に押し付けてギリギリの角度で撮影しました。広角レンズで撮影する時は、カメラの位置が数センチ違っただけで、全然違う写真になることが多いので、アングルには、こだわります。撮影地:那珂核融合研究所

核融合に関しては、冒頭でも触れたように誤解されやすいテーマでもありますが、次世代エネルギーの候補のひとつとして世界中で研究されているテーマでもありますので、これらの写真をご覧になって、興味を持ってくださる方がひとりでも増えてくれればいいなと思っています。誤解がもとで間違った未来を選択してしまうような事態だけは避けたいと思っていますので。

※ このウェブサイトでは、写真を展示したギャラリーページも用意してありますが、そちらはLightbox形式で表示していますので、ポータルサイトの画像検索の対象にはなりません。そこで、写真が検索の対象になるように、このようなページを設定させていただきました。ご了承ください。なお、ギャラリーよりもこちらの方が、写真点数が多く、解説文が長めになっています。