写真集の構成から完成まで

 この文章は、以前投稿した「売れる(?)写真集の作り方」の3回目です。今回で一区切りです。

 自分が1冊目の写真集を作ったとき、構成は後から決める方法で作りました。とりあえず全体の企画と取材先だけを決めて撮影を始めたのです。そのやり方でも本は出来たし、増刷にもなったので問題ないといえば問題ないのですが、後から構成してゆくと「あっ、ここには文字を載せやすい写真が必要だった。」とか、「説明的な写真も必要じゃん!」などと思うことがあり、それ以来、事前に構成を考えてから撮影を始めるようになりました。私の場合、追加の撮影が簡単にできるわけではないので、足りなかったらまた撮りに行くということができないのです。

 構成を考える時には、まず、思いついたことをどんどんノートに書いてゆきます。私の場合は、高校生の時から画材屋さんで売っているクロッキー帳を使い続けていて、順に番号を振っていますので、いつ何を考えていたのか後からでもわかるようになっています。アイディアは、書き留めておかないと忘れてしまいますから、このクロッキー帳になんでも書き残しておきます。

 以下、事前の準備がめちゃくちゃ大変だった製鉄所の写真集の制作過程を紹介したいと思います。内容は、途中段階のものですので、実際の本と違うところがあります。落書きには後でデザイナーさんにお願いしなければいけない図版なんかもありますね。

 アイディアを書き出していって、頭の中でまとまってきたら、今度は編集さんやデザイナーさんに見てもらうためのきちんとしたものを作ります。まずは、全体の流れをざっくりとまとめます。

 次の段階では、想定されるページ数に対して、どのような写真を入れていくべきかを具体的に考えます。最初の段階では、写真がダミーだったり絵だったりします。絵は、現場の人に「こういう風に撮りたいんです。」と説明をする時にも使いますから、それをはめ込んであります。行ったことのない現場なのに「どこを、どう撮りたいの?」って聞かれることがあって悩ましいのですが、想像力でカバーします。

 撮影が進んでゆくにつれて、写真が増えてゆきます。ダミーの写真や絵だった部分もどんどん置き換えてゆきます。この作業をすることで、不足している写真を視覚的に把握できますから、時間が限られている撮影では、とても重要な作業となります。また、計画をしていても実際の現場が予想と違っていることもありますが、想像通りにならないところが写真の面白さでもありますので、その辺りは柔軟に考えます。現場に着いたら作業が止まっていたなんてこともありますし、思いがけずいいところに連れて行ってくれたなんてこともありますから。また、ある程度撮影が進んだら、本全体のページ数も、2案くらいを考えておいて、編集さんに検討してもらうことがあります。この案は、インタビュー記事を最後の方にまとめ、そこを一色刷りにすることで予算を抑える案になっています。

 この製鉄所の撮影では、鉄鉱石から鋼鉄となり、最後に製品として出てゆくまでの工程をストーリーとして見せたかったことと撮影時間が非常にタイトであったため、構成を非常に細かく設定しなければいけませんでした。しかし、構成をどこまで詳細に詰めるかは、写真集の内容によって変わってくると思います。実際、これを書いている時点でも次回作のための撮影取材をしていますが、それは複数の取材先にまたがるため、全体のボリュームが把握できず、このような詳細なものを作るに至っていません。各取材先ごとに必要な項目とページ配分、順番を、クロッキー帳にざっくりと書いてあるだけです。

 写真集を作る時に、編集さんやデザイナーさんの意見を取り入れることは大切です。でも、自分の写真を本当に理解できているのは、自分だけです。自分自身のブランディングまで、編集さんやデザイナーさんが考えてくれるわけではありません。自分に「こうしたい!」という明確な意思があり、1枚1枚の写真の選択理由まできちんと説明できるのであれば、意見は意見として受け止めた上で、自分の意思を貫くことも重要だと考えています。

 さて、写真を撮り終えて、原稿を書いて、構成までしたらひと段落です。次の工程は印刷なんですが、これが曲者です。当然印刷屋さんにお任せすることになるのですが、色見本を渡しても色が合わないことが多い。ちなみに私は、以下の環境で写真の現像をしています。モニターは、EIZO製CS2420をキャリブレーションして使用。外からの光は、遮光カーテンと衝立でカット。照明は、色評価用の蛍光灯をモニターに直接当たらない様に設置。机は灰色。本人は黒い服を着用。こんな感じでやっているので、プリンターでの出力は、だいたい同じになっています。なのに、印刷の色は合わない。印刷会社での立会いには必ず行くけど、印刷するときに調整できる範囲なんてごくわずかだから行かないよりマシってくらいでしか調整できません。問題は、製版(RGBデータからCMYKデータへの変換作業)なんだけど、そこは立ち会わせてくれない。だから、いい人に当たります様にと祈るだけ。まあ、自分のこだわりが強いだけで、他の人は、そこまで気にしていないと思うんですけどね。

 こんな感じで本は出来上がるんですけど、写真家の仕事は、本が出来たら終わりではありません。写真について一番詳しいのが自分であるのと同時に、本のことを一番よくわかっているのも自分ですから、本人が売るのが、一番効率がいいわけです。ですから、出版社に丸投げするのではなく、できる限り販売もしなければいけません。例えば、本が出来上がると編集さんが、雑誌や新聞社などに献本してくださいますが、自分が知っている人がいるところには、自分で直接送ります。その方が書評欄などに掲載していただける可能性が高いような気がするからです。また、まずは知ってもらうことが大事ですので、講演などのお話があった場合は、積極的に参加します。初めは苦手だったのですが、だんだんと慣れてきまたし、読者と直接お会いできる良い機会だと思っています。

 さて、写真集製作に関して、これまでの経験をまとめてみました。マニアックな記事に最後までお付き合いいただきまして、ありがとうございました。

 以上、写真家西澤の悪戦苦闘でした。