首都圏外郭放水路の写真を解説文とともに紹介します。

首都圏外郭放水路の画像

洪水を防ぐための施設、首都圏外郭放水路です。この空間は、河川から集めた水の勢いを弱めるための設備で調圧水槽と呼ばれています。この写真は、2004年に国土交通省江戸川河川事務所が外郭放水路を広報する目的で作ったウェブサイトのために撮影した写真です。ウェブサイトにアップされた当時は、世界中からアクセスが殺到したそうです。また、その後「TIME」誌をはじめとした様々な雑誌に掲載されました。

首都圏外郭放水路の調圧水槽の画像

別の角度から撮影した調圧水槽です。この近くには、氾濫しやすい河川が4本あるため、それらが増水する前に地下のトンネル経由でここに集めます。集めた後は、余裕のある河川(江戸川)に放流する仕組みです。この写真を撮った時は、2〜3日前に設備を稼働させたとのことで、湿度がとても高く、持って行ったカメラのうち1台は、シャッターが故障してしまいました。当時のフィルムカメラは、防塵防滴なんて構造になっていませんでしたから。

首都圏外郭放水路のポンプ室の画像

調圧水槽に集めた水を汲み上げるためのポンプ室を建設しているところです。ポンプは4台あって、これは、そのひとつです。画面中央の丸い穴の部分に水車が収まります。

外郭放水路のガスタービンエンジンの画像

ポンプを駆動させるのは、航空機から転用された、このガスタービンエンジンです。

首都圏外郭放水路の調圧水槽の画像

河川から溢れた水は、そばにある縦穴に流れ落ちた後、地下トンネルを通り、調圧水槽脇の縦穴(第1立坑)を登って調圧水槽に流れ込みます。この写真は、地下トンネルと調圧水槽をつなぐ第1立坑を調圧水槽側から撮影したもので、カメラは水の流れとは逆方向を向いています。

首都圏外郭放水路の第1立坑の画像

地下トンネルから調圧水槽へと繋がる縦穴(第1立坑)を上から撮影しています。画面の奥(下方)が地下トンネル。画面の左上に調圧水槽の入口が見えています。

首都圏外郭放水路のトンネルの画像

第3立坑と第4立坑をつなぐ地下トンネル部です。

首都圏外郭放水路の第2立坑の画像

第2立坑。撮影当時、一部に工事中の場所があったものの、使える場所はすでに稼働していました。この時も2〜3日前に稼働したばかりだったので、至る所から水がしたたっていました。

首都圏外郭放水路の第3立坑の画像

第3立坑の底部です。立坑の深さは60mほどもありますので、点検のための出入り口は、二重の水密扉になっています。

首都圏外郭放水路の建設中の画像

第4立坑です。当初、反対方向にカメラを向けていましたが、サイレンの音に振り向いたら、トラックが降りてきました。作業員さんが気を利かして隅の方によけてくれたのですが、彼のシルエットは写真の肝でもありましたので、「あんまり向こうに行かないで!」と心の中で叫んでいました。

首都圏外郭放水路の建設中の画像

調圧水槽から一番遠い場所にある第5立坑でシールドマシンが、発進の準備をしていました。

首都圏外郭放水路の建設風景の画像

第4立坑と第5立坑の間で撮影した写真です。第5立坑から発進するシールドマシンは、この正面の丸い部分に到達します。この辺りは川の近くということもあり地盤が柔らかいので、周辺の土を凍結させてから掘る凍結工法という工法が採用されていました。

一連の写真をご覧いただきましたが、撮影当時(2004年)、私の周囲に「工事現場」や「インフラ」、「構造物」に興味を持っている人は皆無でしたので、「こんなのを、かっこいいって思って撮ってるのは、自分くらいかな?」などと思っていました。しかし、冒頭でも触れたように、首都圏外郭放水路で撮影した写真は、国内のメディアだけでなく、海外のメディアでも紹介されました。そして、このことにより、こんなにたくさんの人が興味を持ってくれるものがあるなら、それを撮ることに価値があるんじゃないかと思って、今の活動をするようになりました。ですので、私にとっては、これらの写真は、職業写真家から写真作家へと軸足を移すきっかけのひとつでもあります。今では、このような場所を見学するツアーなどもありますから、隔世の感がありますね。

※ このウェブサイトでは、写真を展示したギャラリーページも用意してありますが、そちらはLightbox形式で表示していますので、ポータルサイトの画像検索の対象になりにくいようです。そこで、写真が検索の対象になるように、このようなページを設定しています。ご了承ください。